2021年5月6日木曜日

【ニュース解説】韓国の20・30代の若者たちはなぜ、文在寅が嫌いなのか

 記事原文


現代ビジネスの「文在寅は『嘘つき』『大嫌い』…韓国“20・30代若者”たちの『ヤバすぎる本音』を全公開する!」という記事を見つけました。韓国の若者たちが左派政権を嫌う傾向にある現状をキャッチしたもので、韓国の世代間の考え方の違いや変化が判るため、興味深い内容でした。それで、少し私の感想や解説も述べたいと思います。

記事の内容は、セウォル号惨事7周年を迎えた今、若者たちの間で文政権の支持率が低落した現状を数人の若者たちのインタビューを交えて紹介しています。

この記事は、インタビューを通して20・30代の若者たちがとくに「社会の不平等」、「男女の葛藤」、「北朝鮮寄りの外交」、「不動産価格の高騰問題」等の問題点に対して不満を持っていると伝えています。

ここで列挙したイシューは、韓国のネットでよく議論噴出するネタですが、私の個人的な感想では、「北朝鮮寄りの外交」と「不動産価格の高騰問題」の二点が世代間の思想変化をよく表していると捉えます。

「社会の不平等」は、昔からずっと取り上げてきた問題ですね。

「男女の葛藤」については、少し補足説明が必要になるかと思います。

文在寅は大統領選挙での公約として「性平等」を掲げていました。

そのため、世間からよくフェミニスト大統領と言われています。ネット上で「男性に対する逆差別」を訴えながら文大統領を批判する声が目立ちますが、実際はどれくらいの若い男性がそれに共感しているのかは未知数です。

ネットの書き込みは、若い世代が遙かに活発に行っているため、「ネット世論=若者の認識」という公式が成り立ちます。韓国はネット世論が社会に対して強い影響力を持つ国として有名で、ネットで話題沸騰すると、マスコミがすぐ取り上げてくれます。

今年4月7日に実施されたソウル市長選挙で野党「国民の力」の候補が与党「共に民主党」の候補に勝利しましたが、その際、選挙後出口調査で20・30代の与党離れが明るみに出ました。

2021年4月7日ソウル市長選挙後の出口調査結果


二党の他にも候補を出している政党がありますので、両方の数値合算は100%を少し下回ります。この結果を見ると、40代でのみ与党が優勢です。50代の場合は、50代前半は与党より、後半は野党よりと言っていいでしょう。

ここで40・50代の間では、なぜ与党、即ち左派が優勢なのかを説明しましょう。

80年代の学生運動を主導していた人たちの多くが政界に進出しており、文政権でも中枢を担っています。彼らは組織結成や活動方法については、60年代の日本の学生運動を大部分踏襲しています。一方、思想としては北朝鮮の「主体思想」を理想としており、「親北主義」・「民族主義」の色が強いです。

全斗煥政権の1980年から韓国では、民族の自負心を高揚するための「民族主義」と反日感情を煽るための「反日教育」が学校やマスコミなどに行き渡るようになりました。その時代を感受性の高い幼少期・青春期として過ごした世代は強い愛国心を抱き、同時に同じ民族である北朝鮮とは仲良くするべきであるとの考え方を持つようになります。

愛国心とは言っても、政府に対する忠誠とより、自民族を愛するという概念です。韓国政府よりも、民族主義を強調する北朝鮮の政権にもっと親しみを感じるのも自然な流れでした。80年代の反日教育を受けてきた世代は、次第に社会人となり、国家と社会を動かす存在になっていきます。よって90年代の韓国は最も反日情緒が強く、北朝鮮に対して融和的な時代でした。

そういうわけで、今の40代から50代半ばまでは左派政権に対する支持率が高いです。

それに対して、20・30代の方は、民族主義の色は比較的薄く、代わりに個人主義の傾向が強いです。理由として挙げられるのは、日本文化の解禁、グローバル時代への突入、個人レベルの情報力の上昇があります。

日本文化の解禁

2003年から当時の金大中政権は、日本映画の輸入・上映を解禁しました。以降、徐々に日本文化の流入は増え続け、日本人や日本文化に親しみを感じる韓国の子供たちが増えるようになります。その子供たちが今は20代になっているわけです。

グローバル時代への突入

2000年代に入り、韓国の国民所得は増える一方、国内の大手企業はグローバル市場で勝負をかけるようになります。この二つの要因が化学反応を起こし、海外への留学生が急増しました。海外留学にいける経済的余裕とメリットが増したのです。

海外留学から戻ってきた若者たちは旧世代に比べてより客観的な思考が可能になりました。

個人レベルの情報力の強化

インターネット・Youtubeのおかげで情報量が急増し、若者たちは情報強者になれます。

豊富な知識と情報量は左派の扇動に免疫力を持たせました。


こういった理由で、今の20・30代は、民族主義よりも個人の幸福を重視するようになりました。南北統一よりは現在の繁栄を持続することがもっと大事です。それは、親米主義へと繋がります。

今、韓国の経済が豊かになれたのは、駐韓米軍の存在が絶大ということを若者たちは理解しています。そんな状況の中で、米国を遠ざけて北朝鮮・中国に偏る政策は許すわけにはいきません。それが多くの若者たちの本音でしょう。











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